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小寺 宣

歌うという人間の超能力

僕の演奏や生徒様に教えている事は、僕が25歳の時に教わっていた先生からの影響がとても大きいです。


先生からはいろんな事を教わり、僕のギター人生を大きく変えました。


奏法、ハーモニーの捉え方、音楽の聴き方など、本当に色々あります。


その中で僕の人生を大きく変えたのが口承という音楽記憶法です。


これはめちゃくちゃ簡単に言うと、歌って覚えたものは忘れないという人間の不思議な性質を楽器演奏に利用するという事です。


本当に不思議なんですが、人間はなぜか歌って覚えたものは忘れない、記憶の忘却が起こらないんです。



いくつか例をあげますね。


たとえば、あなたはおそらく泳げタイヤキ君の歌を知っていると思います。


♫ま〜いにち ま〜いにち 僕らはてっぱんの〜というあれです。


あなたはこの10年間でこの歌の練習をちゃんとした事があるでしょうか。


きっとないと思います。


僕もありません。


ではこの曲の続きを思い出して歌ってみましょう。


♫ま〜いにち ま〜いにち 僕らはてっぱんの〜


の続きです。


おそらくみんな歌えるはずです。(ブログの続きを読む前に思い出して歌ってみてください)




答えを一応言うと、


♫うえでやかれて いやになっちゃうよ〜

です。


歌詞を


♫うえにやかれて


みたいに多少間違える事はあるかもしれませんが、メロディーは絶対間違えなかったと思います。


なぜなら歌で記憶しているからです。


では20年後、このタイヤキ君のメロディーをわすれてしまうでしょうか。


絶対に覚えているはずです。




ここまで話して、もしかしたらこんな意見があるかもしれません。


「それはシンプルなメロディーだから覚えていられるんじゃないの?もっと複雑なメロディーなら忘れてしまうんじゃないの?」と。


実は人間は複雑なメロディーであっても、歌って覚えたものは忘れないんですね。


僕は10年以上前にマサ小浜さんというギタリストのギターソロを耳コピしました。



この動画の3:34秒からのギターソロです。


このギターソロをまず徹底的に歌って覚えました。


あれから10年以上経ったんですが、いまだにこのギターソロを歌えるんですね。


もう指板のどの位置で弾いているとか細かい弾き方は忘れたんですが、歌う事は何年たっても覚えています。



とにかく人間は歌って覚えたものは、フライパンにこびりついたコゲのようにいつまでも覚えています。


忘れたくても忘れられないくらい強烈に覚える事が可能なんですね。


これを僕たち音楽を志す人間が使わないなんて、もったいないどころの話じゃないんです。


藤井聡太さんクラスに頭がいいのに、将棋をしないようなものです。


大谷翔平さんクラスの体を持ちながら、野球をしないようなものです。


石原さとみさんクラスに美人なのに、女優やモデルをしないようなものです。


自分の才能を使えよ!と笑


歌って覚えたものは忘れない、これは他の動物は持っていない人間だけが持つ超能力と言っていいと思います。


人間で普通に健康な方ならこの能力は必ずあります。



ではこれをどう音楽に使っていくのかですよね。


色々応用が効きすぎて一言でこれと言えないんですが、たとえば最近レッスンでもお伝えしている音楽理論の学習に使います。


オクターブとは?

メジャー、マイナーとは?

セブンスとは?

メジャーセブンスとは?

ブルーススケールとは?

8ビートとは?

ハーフタイムシャッフルとは?


こういうものを全て歌って体感するから、音楽が本当の意味で理解でき1度覚えたら忘れないんですね。



他には耳コピにも使えます。


まずコピーしたいもの、フレーズやベースライン、リフ、リズムなどを歌って覚えます。


それらをまず体にしっかりと入れて覚えている状態だから、ギターで音を探していく耳コピがかなり楽になるんですね。



アドリブの演奏にも使えます。


アドリブは自分の中にある、引き出しからの選択です。


つまりフレーズやリックを全て歌って覚える事で、ずっとフレーズやリックを忘れずにどんどんインプットして引き出しの多いプレイヤーになる事が可能です。



なんとなく口承の重要さ、パワー、可能性を感じてもらえたでしょうか。


ただこの歌って覚える事は、めんどくさく修得に時間がかかります。


紙に書いてある文字で勉強すれば一瞬で終わる話が、自分で歌って覚えるとなると何倍何十倍と時間がかかります。


紙や文字での勉強、あとYouTubeなどを見る事は、全て受け身の学びなんですね。


無駄とは言わないけど、学びとしてはかなり薄いです。


なぜなら受け身の学びは楽だからです。


本当に上達したいなら、自分の体と時間を使って体験していく学びが必要なんです。


それは大変なんですが、ギター上級者の世界に行くには絶対にさけて通れません。


一緒にひとつずつ楽しんでいきましょう(^^)

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